CO (Carbon monoxide)
(10.弱音のつづきとして)

だるい眠気と寒気のリズム。めまい、頭痛、それから吐き気。
本日は曇りのち雨、ときどき暴風なり。
体調は昨日に引き続き絶不調。

だから病気は嫌なんですけど。自己管理って何ですか?

自問自答でぐったりな彼はただいま38.5℃。
自業自得と言われても、実感がない発熱の午後。
窓のお外は荒れ模様。さっきのアイツも荒れ模様?
昨日の出来事。
目的の犯罪行為を邪魔してやって怒らせた、かなり危ないお兄さん。
ついて来たのはわかっちゃいるから、そうそう油断も出来ないわけで。
今朝だって、窓からひょいとうかがった外にはヤツの姿がしっかりあった。
せめて隠れてくれないものか。これでは気が休まらないったらない。
不穏な動き。
普段なら、お楽しみの始まり。
誰もが目をみはるような華麗な彼の活躍の予兆。
だけれど、今は。

ヒトゴロシなら他人が言うほど好きじゃないよ、けれど、撃ち合いは好き。
これってやっぱり矛盾だろうか。
ああ、なんだか。今戦ったら負けちゃうかも。なんかそんな気分。

いつもは考えないような、どろどろ浮かぶネガティブな思考。
WでBrouwning社製のBabyな相棒たちを、手に取ってみたけれど。
どうにもさっぱり燃えきれない。
激しい炎になりきれない。
燃えているのに 何か が足りない。
くすぶる炎、不足感。
不完全な燃焼で、退屈きわまるCOは彼の世界に生まれ出た。
ほんのちょっぴり吸ったなら、たちまち息がつまってしまう。

これは、死にいたる病。

そうとは気がつかないうちに、無色無臭の退屈が部屋いっぱいに充満している。
毒性の強いガスにも似た、ひどく、ひどく気だるい空気。
退屈、怠惰、ツマラナイ。
それが彼にとって一番の『毒』。
コイツはふわりと軽いらしい。
この毒は、身体に入り込んだなら血潮の赤さと激しく握手。
もう、あっという間。血液はみんなやつらのもの。
見た目はそうでもなさそうだけれど、実はすっかり毒されて。
息が出来ない。
息苦しい。
いくら空気を吸い込んだって、入ってくるのは退屈ばかり。
普段は退屈をかき消すことなど彼の得意技なのに。
ときたま入った希望にしても、結局は同じこと。
血の流れに乗れなけりゃ、脳にも胸にも届かない。
何にも事件がないなんて、大っ嫌いな展開だ。
たとえ事件があったとしても何も出来ない状況なんて、もっと嫌いな展開だ。
あくびをしても、暇。そして具合が悪いだけ。
ああ。
一たび眠りに落ちたなら、そのままずっと覚めないような。
迫りくるは退屈の波。心が動きを止める時。
無色無臭の退屈を吸い、少しも気がつかないうちに中毒死してしまいそう。
体の病気は耐えられる。どうせすぐに治るから。
けれど。
この瞬間もなお心を毒す、退屈という憂鬱はどうにかならないものなのか。
暇ですねぇ。
そうですねぇ。
うろうろ視線を迷わせながら、話す人もなく独り言。
いっそ眠ってしまったら、退屈な時間はすぐ過ぎてゆくのに。
動けなーい、でも油断できなーい。だからぐっすり眠れなーい。
狙われてるんじゃあ危ないから、彼女も呼べなーい。つまらなーい。
ときにはこんなこともある、そう割りきるしかないのだろうか。

今夜のうちには熱が下がるだろう。
たぶん明日は、いつもどおりの朝が来る。

Fin.

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