A room of 1.55u

四畳半の狭い部屋に生活がみちみちに詰まっている。
卍型に並んだ四つの畳と、中央の半畳が作る正方形なスペース。
それがこの部屋のすべて。いたって狭い俺様のお部屋だ。

春は一の畳。
玄関の近く、気持ちのよい春風が一番吹き込んでくるところに寝転んで、
のびのびと体を伸ばす。
畳からはみ出た足が壁につっかえるが、体をひねって無理やり伸びる。
台所の小窓から差し込む春の陽が気持ちいい。

夏は二の畳。
北向きの窓の近くで座って過ごす。
日当たりの悪い部屋だが、風通しは悪くない。
夏はこの部屋唯一の窓らしい窓の側で、日がな毎日風にあたって生きている。

秋は三の畳。
隙間風を避けるに一番いい場所で、新聞置き場に近い位置だから。
夏も終わりを告げる頃からは、台所横の壁に寄りかかって一日の大半をすごす。
秋の夜長はテレビと新聞が親友だ。
この位置から見やすいように、テレビの向きも調節する。

冬は四の畳。
曇り空から雪がちらつく頃。
俺は四つ目の畳の上で寝転がり、丸まって過ごす。
理由は簡単、そこが暖房機の真ん前だから。
一年中出しっぱなし古いヒーターは、いつもじりじりと暖かい。

四つの季節に四つの畳。これが俺の一年間。
季節ごとに定位置を変え、ほとんど動かずに生活している不健康人間。
だから、なんなんだって言われても困るんだけどね。




どかどかと足音も高く、みすぼらしい階段を上がってくるやつがいる。
がちゃがちゃ派手にドアを鳴らすのはいつものあいつだ。
たいてい勝手に入ってくる。
今回のように、ごくまれに鍵がかかっていると、とたんに不機嫌になる。
季節の定位置から立ち上がってドアを開けてやると、むすっとした表情で俺をにらむ。
そんな顔、されてもなあ。
靴を脱ぎ散らかしては、ずかずか部屋に上がりこみ、
部屋の中央の、真四角な半畳の上に置いた小さなテーブルにどかっと座る。
傍若無人なブローニング・ベビー。
部屋の真ん中、俺が決して座らない場所は、いつもあいつの指定席。
掌を差し出すと、銃が乗る。
いつか俺がやった(というか、「くれ」の一言で奪い取られた)二挺の銃だ。
バラして、掃除して、調整して。
返してやって、ハイ、終わり。
時には会話し、時には泊り、時には甘えて八つ当たり。
かわいいもんじゃない?年下のあいつ。
時にはあっという間に去っていく。
自分の都合が最優先の、ゴーイング・マイ・ウェイ主義。
弟みたいな、息子みたいな、親友みたいな?
なーんか憎めないのよね。
嫌われっこない、生来のとっつきやすさ。こんなのをお得な性質っていうんでしょ。
かわいい彼女がいるらしいよ。
俺にも紹介しろっての。
ていうか、俺に女の子、紹介して。
こんな半・引きこもり生活じゃあ、出会いがないんだよぉ。
自分勝手に生きてても自然とモテる、さわやかボーイはいいですな。くそー。
あさって、彼女の誕生日らしいよ。
何で前々日に俺んとこ来るかね、彼女のために時間使ってやれよな。
だからテーブルに座んのやめなさい、行儀悪ぃだろーが、このガキは。
だりぃーだの腰痛ぇーだの言ってんじゃないよ、まだ俺より若いのに。
こいつ来るとにぎやかでいいんだけど、部屋が雑然とするんだ。
俺より物を片付けないんだよな、こいつ。
だらしねーよなあ。
これで射撃の精度が超天才級で、かわいい彼女がいて、金回りがいいわけ?
ずるいよなぁ。
こら。
一人勝ちはずるいでしょーが、年上は敬いなさい。俺にも何かよこしなさいって。
半畳分くらいでいいからさ。

Fin.

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