地質学者が言いました。
「マントルの奥、さらに奥、核の中心がそこでしょう」
学者は答えて言いました。
「それは『地球』という球体の中心にすぎない。私が知りたいのは、世界の真ん中なのだ」
政治学者が言いました。
「某国と某国と某国、この3国が世界の中心であります」
学者は答えて言いました。
「それは政治の話だ。中心国のことではなく、私が知りたいのは、世界の真ん中なのだ」
天文学者が言いました。
「自転軸の両極が、世界の真ん中なのではないか」
学者は答えて言いました。
「両極は二つあるではないか、真ん中は唯一のはず。私が知りたいのは、世界の真ん中なのだ」
数学者が言いました。
「地球をくまなく計測し、計算して割り出してみては」
学者は答えて言いました。
「その方法でわかるのは、地球の長さ、高さ、幅ばかり。それぞれの真ん中がわかったところでどうにもならぬ。
私が知りたいのは、世界の真ん中なのだ」
神学者が言いました。
「最初に神がお創りになった地、それが世界の中心です」
学者は答えて言いました。
「では、どの神の、どの神話を真実と見るのか。その意見は曖昧であり、偏っている。
私が知りたいのは、世界の真ん中なのだ」
動物学者が言いました。
「動植物の生態系、それこそが世界そのものです。生態系の真ん中が世界の真ん中と言えるでしょう」
学者は答えて言いました。
「生物だけが世界ではない、すべてを含んで世界と言える。私が知りたいのは、世界の真ん中なのだ」
心理学者が言いました。
「それは人の心です。心の中にこそ、真実はあります」
学者は答えて言いました。
「お前達にはそうとしか言いようのないものかもしれぬ、しかし、私が知りたいのは、世界の真ん中なのだ」
真実を探求し続ける偉い学者と、7人の学者が論議するその部屋の窓の外で、リンゴをかじる学生が一人。
学者達は授業どころではないから、今日の学校はお休み。
学生は一人増え二人増え、集って窓の下に座りました。
「どこが世界の真ん中であろうか」
窓から声が聞こえて、学生たちは口々に言いました。
「ばかだなぁ、そんなわかりきったことを考えるなんて」
「叫べばいいだけさ、『ここが世界の真ん中だ』ってね」
そう、そうすれば、どこだって世界の真ん中になるのにね。
だってここは、まぁるい地球の上で、ぐるり、つながる世界。
「どこが世界の真ん中であろうか」
ほら、ここが、世界の真ん中でした。