
お菓子の国に行ったんだ。 全てのものがお菓子でできていた。 石畳はクッキーだし、窓のガラスはハッカ風味の氷砂糖。 並木道の木々の葉は一つ残らずリーフパイ。 落ち葉のパイ生地は誰かに踏まれるたびにサクサクと音を立てる。 そこには人間たちがいた。 普通の人間とはちょっと違うんだ。 彼らはお菓子でできていた。 飴細工の髪。マシュマロの肌。チョコレートの服。 お菓子でしかないはずなのに、皆、自由自在に動いていた。 娘がいたんだ。 きれいな娘だった。 真っ白な頬がふんわりとして、とても愛らしい娘だった。 脇に抱えて連れ去ってみた。 野を越え山を越え、人間の町に駆け戻った。 お菓子の国から遠ざかるほどに、娘はだんだんとおとなしくなった。 静かになった。 動かなくなった。 人間の娘のようだった体はどんどんタダの物になっていった。 弾力のある体、ただ柔らかい。 町の裏路地の片隅で娘を地面に降ろしてみた。 見開いたまま、目を閉じない。 うつろな瞳は僕を見ているような、何も見ていないような。 真っ白い指をかじってみた。 ふんわりとちぎれてバニラの香りがした。 指の中央にはジャムが入っていた。 真っ赤ないちごジャム。 きれいな瞳がぽろりと落ちた。 拾って口に含んでみると甘いミルクの味がした。 連れてきた娘はもう動かない。 |