蒼い月 −遥か遥かな異国へ届け−
こんなに月が蒼い夜は、不思議なことが起きるに違いない。
千夜一夜の物語とか、
月兎たちの集いとか、
月に住む巨大な蟹が寝返りをうつとか、
古代から月で働き続ける男に数千と数百年ぶりの休暇が出たとか、
天体望遠鏡の先でかぐや姫が舞っているとか、
月に生えている桂の木がざわめいて一枚の葉が地上に降ったとか、
処女神アルテミスが恋に落ちたとか、
狼男が変身を忘れてしまうとか、
月下美人が咲き乱れていつまでもしぼまないとか、
夜桜が薄桃から蒼に色を変えるとか、
海原で人魚たちが月光を讃える歌を歌うとか、
珊瑚たちがいっせいに桃色の卵を放つとか、
地球からは決して見えない月の裏側がこちらを向いたとか、
ユニコーンとペガサスがそろって月明かりの下を駆けるとか、
遥か遥かな異国から海を越えて運ばれてきた竪琴が、
美術館の奥の奥に納められた竪琴が、
主を失った竪琴が、
ひとりでに夜想曲を奏でるとか。
蒼い月光が世界を照らす夜。
風に乗る夜想曲は、遥か遥かな国へと届く。
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