遥か遠い空に浮かぶ、神秘的な月。
太陽とも星とも異なる不思議な光で地上を照らす。

白い月 蒼い月

白い月 −遥か遥かな夢を叶えよう−
蒼い月 −遥か遥かな異国へ届け−
黒い月 −闇のオマケ−



白い月 −遥か遥かな夢を叶えよう−


白い月。


動かない。
光も放たない。


ただそこにあるだけの
紙で出来た作り物だ。


喫茶店のテーブルに取り残されていた紙の月は、コースターだった。
おそらくは半月をイメージした白い月の模様。
少し皺がついている。その上、水を吸ってふやけている。
ペーパームーンの裏には殴り書きの詩。
書きつけたのは、名も無い路上のミュージシャン。
かき集めたなけなしの小銭で、今日のコーヒーを飲みに来た。
いつか、ライトを浴びる日を。
遥か遥かな夢を信じて。
言葉だけのフォークソングは作りかけの半端物。
なのに、なぜか、歌が聞こえた。
無名のミュージシャンが去った後で。
店員が乱暴な手つきでくしゃくしゃと丸めた紙の月から。
捨てられたゴミ箱の中は真っ暗な夜空だ。
すえた臭いがこもる闇の底で紙の声が歌う。
白い月に託された夢は、きっと、叶うだろう。

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蒼い月 −遥か遥かな異国へ届け−


こんなに月が蒼い夜は、不思議なことが起きるに違いない。

千夜一夜の物語とか、
月兎たちの集いとか、
月に住む巨大な蟹が寝返りをうつとか、
古代から月で働き続ける男に数千と数百年ぶりの休暇が出たとか、
天体望遠鏡の先でかぐや姫が舞っているとか、
月に生えている桂の木がざわめいて一枚の葉が地上に降ったとか、
処女神アルテミスが恋に落ちたとか、
狼男が変身を忘れてしまうとか、
月下美人が咲き乱れていつまでもしぼまないとか、
夜桜が薄桃から蒼に色を変えるとか、
海原で人魚たちが月光を讃える歌を歌うとか、
珊瑚たちがいっせいに桃色の卵を放つとか、
地球からは決して見えない月の裏側がこちらを向いたとか、
ユニコーンとペガサスがそろって月明かりの下を駆けるとか、
遥か遥かな異国から海を越えて運ばれてきた竪琴が、
美術館の奥の奥に納められた竪琴が、
主を失った竪琴が、
ひとりでに夜想曲を奏でるとか。

蒼い月光が世界を照らす夜。
風に乗る夜想曲は、遥か遥かな国へと届く。

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黒い月 −闇のオマケ−

黒い月 隠れ月 霧が流れて闇深し

新月の 闇の夜 星明かりとていと暗し

黒き夜空に黒き月

しかとは見えねど確かに浮かぶ 遥か遥かな天に在る

暗き月影 誰か気づかん

暗き月影 誰か気づかん