ちょっとだけですから愚痴らせてもらえませんか


ちょっとだけですから愚痴らせてもらえませんか。
いやもう、参ってるんですよ。
この頃ますます私の存在って意味があるのかって。
仕事の話なんですけれど、聞いてもらえますか?
最近悩んでいるんですよ、いったい自分の存在価値とは何なのか。
自分の仕事には、はたして意味があるのだろうかと。


職場では、私の両隣でまったく異なる性格の二人が仕事をしているんです。
ここでは三人一組で仕事にあたることになっているまして。
まず右隣のやつ。
こいつは一見爽やかでいいやつなんですが。
自分の仕事以外は一切手伝わないタイプなんですよね。
通行許可時間帯の担当官なんですけれど。
許可するばっかりで通行のルール・マナーに関しては一切口出しなし。
どんなひどい通り方をしても、一っ言も注意しないんですよ。
まあ、当たり前のことなんですけれど。管轄外ですからね。
ここだけの話、どこも同じみたいですよ。
そのくせ一番人気なんですよね、利用者には。
ちょっとはね、うらやましいなぁなんて思うこともあるんです、お恥ずかしい話。
私なんかたいてい無視されちゃうんですから。
正直、納得いきませんよ。
同じように仕事してるわけですよ、同じように。
勤務時間は……確かに私が一番短いんですけどね。
でも私は、誠意を持って利用者と接したいと思ってる。
あいつなんて利用者と接する時間はとにかく短くて、
一瞬のうちに『ハイどうぞー(棒読み)』てなもんでしょ。
利用者の顔なんかいちいち見てられないって言うんですよ。
そりゃスムーズに通すのが仕事ですから当然なんでしょうけれど、
やつの仕事なんて楽なもんですよ。クレームもほとんどないし。
当たり前だと思うでしょ?
そりゃ通行許可を示すのが仕事なんですからある程度は当たり前ですよ。
安心して通っていただけるのは嬉しいことですし。
速やかに通っていただけなきゃ困りますしね、後がつかえますから。
でもそれだけじゃないんですよ。
あいつの顔を見るとね。
皆さんたいがい笑顔か、それなりの表情で通っていかれる。
私や左隣の方とは雲泥の差でしょう?
あ、これを話すには左隣の方を紹介しなくちゃいけないんですけれど。

我々は輪番制で働いてまして。
右隣のやつ、私、左隣の方、また右隣…という風に交代で顔を出すんです。
左隣の方はけっこう派手に見えるんですけれど、かなりマジメな一徹者で。
ちょっと怖いんですよ、ここだけの話。
言うときはビシッと言うタイプっていうんですか?
NO!がはっきりいえるタイプなんですよね、駄目なものは駄目、と。
これがねぇ、利用者の方からは不人気で不人気で。
大っ切な役目なんですよぉ。
左隣の方は、通行禁止時間帯の担当官なんです。
まあ、あの方の顔を見ると、『あ、通れないんだ』とわかるじゃないですか。
私と違って権限強いですからね、はっきり『停止せよ』の意味なわけですよ。
無視して通ったやつなんて警察沙汰になっちゃう。
だもんだから……
利用者の方々のことですから内緒にしてくださいよ?
私の無視もアレですけど、あの方なんてしょっちゅう舌打ちされてますから。
舌打ちって、利用者の皆さんからですよ、念のため。
仕事してるだけでコレですもん。
まあね、わかってて勤めてる辺り、あの方は偉いんですけどね。
中には声に出して『とっとと(次のやつに)代われよ〜』なんて言う方も多くて。
せめてねぇ、気持ちはわかるから、心の中だけで言ってて欲しいですよね。
ま、もっと偉いなぁと思うのは、利用者の顔はちゃんと覚えてることですよ。
目の前にずらっと並んで…こう…あの方が交代するのを待つもんですから。
よく見えるんですね、利用者の方々が。
別に見てたって見なくたって仕事はできますけど。
あの方はしっかり利用者と目を合わせて仕事してる。
でもたいがい、皆さん怖い顔してイライラしながら待ってる。
もちろんそうじゃない方もいますよ。
でも、目なんか吊りあがっちゃって、まるでけんか腰の方も多いんです。
私なんて気が弱くてつい目をそらしたりしてますから。偉いなあ、と。

私の仕事は、注意時間帯担当といいまして。
まあ、要するにつなぎなんですよ。
通行許可の担当官から禁止の担当官に交代するときに出るんです。
いきなり入れ替わるとホラ、利用者の方があわてちゃって危ないんですよ。
皆さん、急には止まれないですから。
つなぎですからたいした時間じゃないんですけれどね、ちょっと出る。
それでまあ、注意を促すのが仕事でしてねぇ。
私の顔を見たら、もうすぐ通行禁止時間帯に入りますよーということで。
止まってくださーい、と思って出て行くんですけれどね。
何だかねぇ、逆の意味にとる人、多いんですよ。
情けない話、たまーに鬱ですよ。
私の顔見たとたん一気に進みが速くなって駆け抜けられたりして。
泣けちゃいますねぇ、おーい、俺の言ってることと逆だぞー、なぁんてね。

我々の仕事も、上から決められたとおりにやってるだけなもんでしてね。
引っ込めとかとっとと出て来いとか、無理な注文されても困るんですよ。
法律に則って、その通りにお勤めしてるわけです。
ええ、公的な仕事ですけど。あ、でもね。
お役所仕事と言わないでください。
確かに役所づとめの一種かもしれませんよ、我々は。
でもね、役所づとめって意外と大変なんです、悩みだってあるんです。
内容はそこ・ここで違いますけれどね。
お役所仕事って言葉でもって、融通が利かないとか、他より楽だとか、
なーんか偉そうとか。そういうイメージ持つの、やめて欲しいな。
なぁーんて思ったりするわけですよ。物は物なりに。
早く通りたいもんだからって我々の勤務時間の長さに文句言われたり?
あまつさえ無視して事故を起こした挙句に責任押し付けようとしたり?
私たちに突っ込んで大事故を起こされたりする危険だってあるわけで。
なにせ道端に立ってますから。もちろん普段は文句一つ言わずに。
人間の役所づとめの方々なんて、もっと大変なんでしょうね。
我々より仕事複雑ですから、いろいろあるんでしょうねぇ。
人間じゃなくて良かったよな、なんて思いますよ。
まあその分、私たちみたいに台風に吹きさらされてあっちゃこっちゃ向くとか、
何か当たって割れちゃうなんてことは少ないでしょうけどね(笑)
そうは言っても、我々を直してくれるのも人間の方々の仕事ですからねぇ。
やっぱり、我々のほうがまだ楽ですかね、24時間体制ですけど。

我々の仕事は。
交通法に基づき一定の時間において通行の許可・禁止を示すこと、
並びに許可から禁止への移行を知らせ注意を促すことでしてね。
別のパターンでは、二人一組でもっと小さなブースで働く班もあります。
そこには自分と同じ役割を専門に務めるものはいないんですよ。
私の役目は、うちの右隣と同じ許可時間帯の担当官が兼任するんです。
点滅でね。
『もうすぐ赤になりますよー』ってね。
そうですね、歩行者専用の通行エリアはそういう班が担当してます。
こんな話を聞くと、ますますもって自分のいる意義がわからない。
いなくたっていいんじゃないか、自分は必要ないんじゃないかと思えてくる。
考えるとどんどん落ち込むんで、なるべく考えないことにしているんですが。
何せ勤務時間が短いでしょう?
いっぱいあるわけですよ、時間が。
自分が出番じゃない、待機時間の方が長いもんでね。
考えちゃうんですよねぇ、どうしてもね……。

外国では、同じ仕事の連中でも、またいろいろと違うみたいですけれどね。
色とか、形とかね!!
関係ないんですけどねー!(笑)


最後の「色とか形とか…」のくだりは、
漫画『すごいよ!マ●ルさん』のパクリにしてリスペクトです。
たぶん呑みながら話してて、この辺で酔いが回った感じで。


うん、そう。

車道の信号機に勤めてる、黄色さんの愚痴(笑)

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