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この先には、暴力表現・残虐表現が含まれています。 ごく軽めですが、血や大怪我が苦手な方はご注意を! また、暴力表現のため、R−15指定になります。 身体か心の年齢が十五歳以下の方は見ちゃダメ。 |
キッドは3つ進んだ駅で地下鉄を降りた。
階段を上って地上へと向かう。出入り口を出ればそこはオフィス街だ。
町は今日も灰色に息づいている。
高いビル群がニョキニョキ並んで冬空の下で背くらべ。
いつもと変わらぬ乾いた空気を冬の風がかき回す。
二度目のバトルは突然始まった。
舞台はスクランブル交差点の真っただ中。
西から東へ、北から南へ、数え切れない人々の点が流れるようにうごめく場所だ。
キッドも人の群れに混ざって交差点を渡っていた。
ちょうど三分の一ほど渡ったときだ。
前方からやってきたビジネスマンが、突然カバンを振った。
下から斜めに上がる動きで、カバンはキッドの頭部に迫る。
ヒュンッ、風を切る音。
紙一重の距離でカバンをかわしたキッドの頬に一筋の朱が走った。
浅い傷跡。
カバンの角には何か光る物があった。
頬が切れたことからするとたぶん刃物なのだろう。
キッドがさらに身をかわすと、カバンを振ったビジネスマン風の男も一歩前に出た。
そのまま見事なハイキック。
スーツ姿のくせになんとも身軽な男だ。
キッドは腕を上げてキックを受け止める。
周囲は意外なくらい無反応だ。
ちらちら眺めるくらいのことはしてもいいはずなのにだれ一人振り返る者もいない。
受け止められた足を引っ込めた男は、反対の足でもう一度蹴りを放った。
靴の先端に目立つ物が生えている。
細身の刃物だ。
刃渡りは10cmくらい。
男が狙っているのはキッドのこめかみ辺りだろうか。
キッドは頭を後ろにそらせて刃をかわす。
同時に素早く相手の靴をもぎ取った。
投げつける。
キッドの手から男の首に向かって靴が飛んだ。
刃は喉仏の下辺り、首の中央に深々と突き刺さる。
男の喉が何かを飲み込んだように動いた。
しゃがみ込む男。
周囲を行く人々は冷淡なほどに無関心なままだ。誰も立ち止まらない。
短時間の出来事。
始まって終わるまで60秒もかからないショートバトルだ。
周囲の無関心をいいことに、キッドは何食わぬ顔でその場を去った。
すみやかに交差点を渡りきる。
キッドの遥か後ろにはしゃがみこんだままの男。
キッドはさらに進む。
顔は真っ直ぐ前に向け、意識だけで後ろを気にしながら足を速めて。
と、そのとき。
「痛ぇ!」
後ろを気にしていたせいだろうか、キッドは通行人に肩をぶつけてしまった。
相手はずいぶんとガタイのいい男だ。
「あ、すいません」
軽く謝って通りすぎようとしたキッドの腕を男がつかむ。
「てめえ、どこ見て歩いてんだよ!」
男は怒気を含んだ声で言い放った。
ひどく険しい目つき。
いわゆる凄味を効かせた表情でキッドをにらみつけている。
「悪いけどそんなヒマないんでー。」
キッドは迷惑そうな顔つきだ。
「何だと!?」
男の表情がいっそう険しくなる。
自分でまいた種ではあるが、キッドの気持ちも分からないではない。
なにせバトルの直後なのだ。
地下鉄での出来事もあるし、どうも狙われていると思って良さそうな状況。
どうやら狙う者たちとは無関係そうなこの男に関わっている場合ではない。
「あ。」
急に、キッドが上を指さした。
「あ?」
つられて男も上を向く。
その瞬間、キッドの膝が猛烈なスピードで男の金的にめり込んだ。
「ごふっ!」
「ごめんなさーい♪」
股間を押さえてうずくまる背中に明るい声を投げ捨てて、キッドは素早く逃げだした。
その様子を鷹のような目つきで観察する者がいた。
雑踏の中に溶けこんで足早に立ち去るキッドの頭上に。
高い高いオフィスビルの一つから、アッシュグレイの頭をじっと見据える男が。
男が握っているのは遠距離狙撃用の長い銃だ。
窓の隙間から銃口を出し、望遠用のスコープをのぞいている。
その指が引き金にかかる。
地上のキッドは気づかない。
神経をとぎすまし、狙いを定めるスナイパー。
キッドは足を緩め、てくてく歩いている。
息を詰めるスナイパー。
ちょうどその時、地上のキッドが立ち止まった。別の信号に引っかかったのだ。
狙う者にとっては絶好のチャンス。
慎重に狙いを定め直して、男は引き金を引いた。
「くしゅんっ!」
なんてナイスなタイミングだろう。
キッドが急にくしゃみをした。その拍子に頭が大きく動いたのだ。
弾丸は1秒前まで頭があった場所を通り抜け、アスファルトに突き刺さった。
異変に気づいたキッドが弾かれたようにビルを見上げる。
信号が青に変わった。
キッドは一気に駆けだす。
窓越しの人影は舌打ちをもらし、腰に下げた通信機へと手を伸ばした。
STAGE CLEAR.
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