物がないくせに雑然とした部屋。
片づかない室内は暖かく、曇り空の薄ら寒い外とは対照的だ。
部屋の中には男が二人。
一人は少年だ。
アッシュグレイの髪が目立つ少年の通称はキッド。
光の強い瞳が勝気なイメージを放っている。
もう一人は三十歳前後だろうか。
名を圭介という。
無精ひげに伸びた髪、お世辞にもクールとは言えないルーズな印象の男だ。
小さな窓の向こうには灰色の街が見える。
曇り空の下、アスファルトの道端にはひまそうな電信柱。
ブロック塀の奥では古ぼけた家々が汚れた壁をさらす。
二人は部屋の真ん中に置かれた低いテーブルに向かっていた。
テーブルの上にはモバイルパソコンと一枚の写真がある。
パソコンの画面には地図のようなものと、なぜか自動車の立体モデルが映し出されていた。
「これだけー?」
キッドが不満げな声とともに写真をつまみ上げる。
「『これだけ』って……。お前ね、『こんなに』の間・違・い!」
圭介はキッドの額をコツンと叩いた。
痛、と小さくもらして、キッドは舌打ちを打つ。
「一番大事なことがまだなんてさー、頼りがいねぇー。」
キッドのつぶやきが終わらぬうちに圭介が動いた。
「何をぉ? この凄腕を捕まえて何てこと言ってんだ、この。」
もう一度、額をコツン。
「お前は本っ当に失礼なガキだよな〜。俺はね、情報業界じゃNo.1よ?」
ボサボサの頭をかきながら圭介が言う。
親指を立てて自分を指すポーズ。
そんな圭介をキッドが笑い飛ばす。
「なぁにー、ガキになめられてムカツクとか思ってるわけ?」
言われた方はため息を一つ。
「そういうのじゃなくて。ナメル・ナメナイなんてどうでもいいんだけどさ。
なんて言うかなぁ、結構助けたり面倒見てやってんじゃない、俺?」
答えるようにペロッと舌を出すキッド。
「はいはーい、お世話になってまーす♪」
圭介が何か言おうとしたとたん、キッドはさっと立ち上がる。
そのまま軽やかに部屋を出て行く背中。
見送って、圭介はまた一つため息をついた。
「もうちょっと大事にしてくれたってさぁ、いいんじゃないの?」
そんな愚痴をつぶやきながら。
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